10種類の所得と損益通算
10種類の所得と損益通算
試験に出題される論点と学習のポイント
10種類の所得は、出題の多い重要な論点です。それぞれの所得の特徴と計算方法を確実に理解してください。
1 利子所得

 利子所得とは、銀行などの預貯金の利子や国債・地方債といった公社債の利子による所得をいいます。また、公社債投資信託(MRF、中期国債ファンドなど)の収益分配金も利子所得に該当します。
 なお、利子所得には必要経費が認められていません。そのため、受け取った利子等の金額がそのまま利子所得の金額となります。

1-1 利子所得の計算式

● 利子や収益分配金の収入金額(必要経費はなし)

こんな過去問が出る!

利子所得の金額は、「利子等の収入金額-元本を取得するために要した負債の利子の額」の算式により計算される。

▶︎ 解答はクリック

答え:×
利子所得の金額は「利子等の収入金額」である。
(2023年5月学科)

1-2 利子所得の課税方法と税率

 利子所得の課税は、預貯金と特定公社債等によって異なります。
 特定公社債等とは、国債、地方債、外国国債、公募公社債、上場公社債、平成27年12月31日以前に発行された公社債(同族会社が発行した社債を除きます)などの一定の公社債や公社債投資信託などをいいます。

▼ 利子所得の課税方法と税率
預貯金の利子

源泉分離課税

※ 支払いを受ける際に、収入金額の20.315(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)が源泉徴収されて課税関係が終了します

特定公社債等の利子・収益分配金

申告分離課税(原則)

※ 支払いを受ける際に、収入金額の20.315(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)が源泉徴収されます

申告不要制度を選択することもできます

2 配当所得

 配当所得とは、株式の配当や株式投資信託の収益分配金などによる所得をいいます。
 配当所得の計算上、借入れにより株式等を取得した場合は、その借入金の負債利子を必要経費として差し引くことができます。

こんな過去問が出る!

個人事業主が事業資金で購入した株式について、配当金を受け取ったことによる所得は、配当所得となる。

▶︎ 解答はクリック

答え:〇
問題文のとおり。
(2022年1月学科)

2-1 配当所得の計算式

● 配当や収益分配金の収入金額-株式等を取得のために要した負債利子

2-2 配当所得の課税方法と税率

 配当所得の課税は、上場株式等と上場株式等以外で異なります。

2-3 上場株式等の課税方法

 支払いを受ける際に、配当金額の20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)が源泉徴収されます。
 原則として総合課税となりますが、申告分離課税や申告不要の選択もできます。なお、NISA 口座内で受け取る配当金は非課税となるため、源泉徴収されることはなく、確定申告の必要もありません。

▼ 上場株式等の課税方法
総合課税
(原則)

● 総合課税として確定申告を行います

○: 配当控除の適用を受けることができます

×: 上場株式等の譲渡損失との損益通算はできません

申告分離課税

● 申告分離課税として確定申告を行うこともできます

○: 上場株式等の譲渡損失との損益通算ができます

×: 配当控除の適用を受けることができません

申告不要

● 源泉徴収で納税を終え、確定申告を行わない選択もできます

×: 配当控除の適用を受けることができません

×: 上場株式等の譲渡損失との損益通算はできません

2-4 上場株式等以外の課税方法

 支払いを受ける際に、配当金額の20.42%(所得税20%+復興特別所得税0.42%)が源泉徴収されます。この場合、住民税は徴収されません。

▼ 上場株式等以外の課税方法
総合課税(原則)

● 総合課税として確定申告を行います

申告不要

● 一回に支払いを受ける配当の金額が次の式で計算した金額以下の場合、源泉徴収されるだけで、確定申告を行わない選択ができます
→10万円×配当計算期間の月数÷12

3 事業所得

 事業所得とは、継続的に対価を得て行う事業(製造業、卸売業、小売業、農業など。FP事業も含む)から得た所得をいいます。事業所得は、その収入を得るためにかかった必要経費を差し引いて求められます。

3-1 事業所得の計算式

● 売上(収入)金額-必要経費(-青色申告特別控除)

こんな過去問が出る!

事業所得の金額は、原則として、その年中の「事業所得に係る総収入金額-必要経費」の算式により計算される。

▶︎ 解答はクリック

答え:〇
問題文のとおり。青色申告特別控除が引けるのは、青色申告を選択している人だけである点に注意する。
(2023年1月学科)

3-2 売上(収入)金額

 事業所得の計算における売上(収入)金額は、年末までに実際に現金等を受け取って いなくても「収入とすべき権利の確定した金額」になります(未収金も含めます)。

3-3 必要経費

 必要経費とは、収入を得るために直接必要な売上原価や販売費、管理費その他の費用 のことをいいます。
 販売費、管理費とは、従業員の給与、地代・家賃、減価償却費などをさします。ただし、生計を一にする親族に支払う給与、家賃、借入金の利子等を除きます。

 
3-4 売上原価

 売上原価とは、当期に売上(収入)として計上された商品の原価のことをいいます。

▼ 売上原価の計算式

● 売上原価=期首商品棚卸高+期中仕入高-期末商品棚卸高

3-5 減価償却費

 建物や機械装置・自動車などは、高額でしかも一度購入すると長年に渡って使用することが一般的です。しかし、これらの資産は時の経過に伴いその価値が年々減少していきます。この目減り分を、その資産を使用している期間に応じて徐々に費用として計上していくことを減価償却費といいます。
 減価償却費の方法には、定額法と定率法があり、個人の法定償却方法は定額法となります。なお、1998年(平成10年)4月1日以降に取得する建物、2016年(平成28年)4月1日以降に取得する建物付属設備および構築物については、定額法を選択することになっています。

こんな過去問が出る!

不動産所得の金額の計算上、2023年中に取得した建物を同年中に貸し付けた場合の当該建物の減価償却費の計算においては、定額法または定率法の選択が可能である。

▶︎ 解答はクリック

答え:×
1998年4月1日以後に取得した建物および2016年4月1日以後に取得した建物付属設備および構築物については、定額法(または旧定額法)しか選択できない。
(2023年5月学科)

▼ 減価償却の方法
建物・建物付属設備・構築物

● 定額法

その他の 減価償却資産

● 原則:定額法

● 例外:税務署への届出を行うことで、定率法も選択することができます

もう一歩おさえておこう!

● 土地は、時の経過により価値が減少しないため減価償却費は計算しません

● 2015 年1月1日以後に取得した美術品のうち、取得価額が1点100万円未満のものは原則として減価償却を行います(元々、美術品等は減価償却を行わない資産でした)

▼ 減価償却費の方法
定額法

● 毎年同じ金額を減価償却費として経費にする方法

▼ 定額法による減価償却費の計算式

●減価償却費 =取得価額×定額法の償却率×使用月数/12ヶ月

定率法

● 毎年一定の割合で減額するように計算する方法で、償却費の金額は初年 度ほど多く、年数を経過するほど減少します

▼ 定額法による減価償却費の計算式

●減価償却費=(取得価額-減価償却累計額)×定率法の償却率 ×使用月数/12ヶ月

▼ 減価償却費のイメージ
定額法,定率法
▼ 減価償却費の方法
定額法

● 取得原価:2,000,000円

● 取得年月:令和6年1月1日

● 耐用年数:6年(定額法償却率:0.167、定率法償却率:0.333)

▼ 定額法の場合

●初年度の減価償却費=2,000,000円×0.167×12ヶ月/12ヶ月=334,500円

●2年目の減価償却費=2,000,000円×0.167×12ヶ月/12ヶ月=334,000円

▼ 定率法の場合

●初年度の減価償却費=2,000,000円×0.333×12ヶ月/12ヶ月=666,000円

●2 年目の減価償却=(2,000,000円-666,000円)×0.333×12ヶ月/12ヶ月=444,222円

3-6 少額減価償却資産における必要経費

 使用可能期間が1年未満または取得価額が10万円未満の減価償却資産については、減価償却を行わずにその取得に要した金額の全額を、その年の必要経費とすることができます。
 また、青色申告を行っている中小企業者等(従業員の数が1,000人以下の法人や個人事業主)は、取得価額が30万円未満のものについては、取得価額の合計のうち300万円に達するまでの取得価額の合計額をその年の必要経費とすることができます。

3-7 一括償却資産

 取得価額が10万円以上20万円未満のものについては、その取得価額を合計し一括して3年間で均等に必要経費とすることができます。

3-8 事業所得の課税方法

● 総合課税

3-9 事業所得と間違いやすい所得の例

● 不動産貸付業(不動産による家賃収入):不動産所得

● 事業用の固定資産を譲渡した場合の収入:譲渡所得

●作家以外(事業として行っていない)の者が得た原稿執筆収入:雑所得

4 不動産所得

 不動産所得とは、主に土地や建物など不動産の貸付けによる所得をいいます。
 具体的には、家賃収入や地代収入が該当しますが、権利金や礼金、更新料、月極駐車場の賃料なども不動産所得となります。
 建物を5棟以上、集合住宅の場合は10室以上貸付けを行っている場合には、事業的規模の不動産所得とされます。事業的規模に該当すると、青色申告を行う際の青色申告特別控除の金額に差が出ることになりますが、あくまでも不動産所得であり、事業所得ではないことに注意が必要です。

こんな過去問が出る!

不動産の貸付けを事業的規模で行ったことにより生じた賃貸収入による所得は、事業所得となる。

▶︎ 解答はクリック

答え:×
不動産の貸し付けで生じた賃貸収入による所得は、規模を問わず不動産所得となる。不動産を扱う場合で事業所得となるのは、不動産の販売や仲介を行ったときである。
(2022年1月学科)

こんな過去問が出る!

アパート等の貸付けが不動産所得における事業的規模であるかどうかの判定において、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であれば、特に反証がない限り、事業的規模として取り扱われる。

▶︎ 解答はクリック

答え:〇
問題文のとおり。建物の貸し付けについては、おおむね5棟10室以上であれば事業的規模とみなされる。
(2023年5月学科)

もう一歩おさえておこう!

● 不動産の賃貸に伴い受け取った敷金のうち、不動産の貸付期間が終了した際に賃借人に返還を要するものは、受け取った年分の不動産所得の金額の計算上、総収入金額には算入しません

● 契約により支払日が定められている賃貸料は、原則として、その定められた支払日が収入を計上する時期となります

こんな過去問が出る!

不動産所得に係る総収入金額を計算する場合において、契約により支払日が定められている賃貸料は、原則として、その定められた支払日が収入すべき時期となる。

▶︎ 解答はクリック

答え:〇
問題文のとおり。たとえば1月分の賃貸料を12月に前払いする契約の場合、12月末時点で未収の賃料があると収入すべき金額に計上しなければならない。
(2023年5月学科)

4-1 不動産所得の計算式

● 売上(収入)金額-必要経費(-青色申告特別控除

※必要経費には、賃貸している土地や建物の固定資産税、修繕費、火災保険料、建物の減価償却費、土地・建物を取得するための借入金の利子などがあります

こんな過去問が出る!

不動産所得の金額は、原則として、「不動産所得に係る総収入金額-必要経費」の算式により計算される。

▶︎ 解答はクリック

答え:〇
問題文のとおり。総収入金額には更新料や、返還を要しない敷金・保証金、共益費なども含まれる。なお、青色申告特別控除が引けるのは、青色申告を選択している人だけである点に注意する。
(2023年5月学科)

こんな過去問が出る!

賃貸の用に供している土地の所有者が、当該土地を取得した際に支出した仲介手数料は、当該土地の取得価額に算入されるため、その支払った年分の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできない。

▶︎ 解答はクリック

答え:〇
問題文のとおり。
(2022年9月学科)

4-2 不動産所得の課税方法

● 総合課税

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