第3節 所得税の計算の流れ
【試験に出題される論点と学習のポイント】
所得税を計算する全体の流れは、学習上非常に重要です。2級では、総所得金額の計算問題が出題されますが、その際の基本となる知識なので、ここでしっかりと理解してください。
1 所得税の計算の流れ

 所得税を計算するまでには、いくつかのステップを踏む必要があります。その計算の流れは以下のとおりとなります。

(1)その年に得たすべての収入から非課税所得を差し引きます。なお、原則として、その年において収入すべきことが確定した金額は、未収であっても収入金額として計上します(例:2024年12月に仕事が完了して収入が確定したが、実際に振り込まれるのは2025年1月の場合、2024年の収入として計上する)。

(2)何から得た収入なのかに応じて、10種類の所得に分類します。そしてそれぞれの収入から必要経費を差し引いて所得を計算します。
その際、いくつかの所得を合算して所得税を計算する総合課税の所得と、他の所得とは分けて単独で所得税を計算する分離課税の所得に分けます。

(3)一定の所得に赤字が出た場合には、損益通算を行います。これは、赤字の所得を黒字の所得と差し引きするものです。ここで算出された「総所得金額」と分離課税の各所得を合計した金額を合計所得金額といいます。

(4)損益通算しても差引できない赤字は、翌年以降3年間にわたって繰り越しが可能です。
これを純損失の繰越控除といいます。なお、繰り越された損失は、その後の黒字の所得から差し引けます。前年に繰り越した赤字があれば、ここで本年の所得と差し引きします。

(5)個人的な事情を考慮するため、その人の担税力やその年の支出の状況などで税額を調整する所得控除を差し引き、課税所得金額を算出します。


(6)課税所得金額に税率を掛けることで、税額を計算します。
総合課税される所得には、所得が多くなるほど税率も高くなる超過累進税率が適用されます。一方、分離課税される所得には、それぞれの税率を適用し所得税を算出します。

(7)計算された税額から税額控除を差し引き、最終的な納税額を算出します。

こんな過去問が出る!

各種所得の金額の計算上、収入金額には、原則として、その年において収入すべきことが確定した金額のうち、未収入の金額を控除した額を計上する。

▶︎ 解答はクリック

答え:×
未収入の金額も、その年の収入金額に計上する。
(2023年1月学科)

こんな過去問が出る!

合計所得金額は、損益通算後の各種所得の金額の合計額に、純損失や雑損失の繰越控除を適用した後の金額である。

▶︎ 解答はクリック

答え:×
合計所得金額とは、損益通算後の総所得金額と分離課税の各所得金額の合計額であり、純損失や雑損失の繰越控除適用前の金額である。
(2022年5月学科)

▼ 所得税の計算の流れ
総合課税,分離課税,損益通算,総所得金額,課税総所得金額,所得控除額,税額控除,申告納税額
2 総合課税と分離課税

 所得税は、原則としてすべての所得を合計して計算する総合課税ですが、所得の種類によっては分離課税により課税されます。また、分離課税申告分離課税源泉分離課税に分けられます。

▼ 総合課税と分離課税
総合課税(原則)

● 所得を合計して税額を計算し、確定申告を行う方法です

分離課税 申告分離課税

● 他の所得と合計せず、分離して税額を計算し、確定申告を行う方法です

源泉分離課税

● 他の所得とは全く分離して、所得を支払う者が支払いの際に一定の税率で所得税を天引き(源泉徴収)し、それだけで所得税の納税が完結する方法です

3 申告納税と源泉徴収

 確定した納税額は、確定申告期限(所得税は通常、翌年3月15日)までに納付する必要があります。これを申告納税といいます。
 また、収入を得た時点で、あらかじめ決められたルールに従って税金が差し引かれるものを源泉徴収といいます。源泉徴収の対象となる所得には、利子所得や配当所得などがあります。

4 復興特別所得税

 2013年(平成25年)から2037年(令和19年)まで、所得税を納める義務のある人は復興特別所得税も納めることとなっています。

復興特別所得税の税率

● 所得税額の2.1%

※ 防衛費の財源確保のための税制措置として、所得税額に対し、当分の間、税率1%の新たな付加税を課す一方、復興特別所得税の税率は1%引き下げて課税期間を延長する見直しが検討されています。

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